鎌倉めぐり

八幡宮【運命の階段】実朝公と公暁、大銀杏前で起きた悲劇

鎌倉時代のターニングポイント、雪が舞う鶴岡八幡宮階段で実朝と公暁が対峙する「聖なる儀式」

身につもる 罪やいかなる つみならん 今日降る雪と ともに消ななむ

~源実朝~

牡丹雪降り注ぐ八幡宮の階段、大銀杏の影より現れた公暁を見たその瞬間を予期していたかのような歌。

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「実朝は公暁に暗殺された」歴史で暗記した、たった1行の知識。そこには優しく聡明であった悲運の将軍実朝と、残酷な時代の犠牲となった公暁の避けられない宿命がありました。

鶴岡八幡宮階段➡鶴岡八幡宮大銀杏
鶴岡八幡宮実朝の植えたビャクシン➡若宮ビャクシン
国宝館歌碑➡実朝の歌碑
船玉神社➡実朝の船の材木切り出し場所
実朝聖地巡礼マップ➡実朝をめぐる旅

鶴岡八幡宮階段と大銀杏

公暁が実朝を暗殺した場所、と鎌倉の八幡宮を訪れた人のだれもが知っている、この階段。かつては実朝の時代から続く大銀杏がありました。

しかし2010年3月10日ちょうど東北大震災の1年前、雨風の影響で倒れてしまいました。樹齢は1000年だったそうです。

今現在は、2010年に倒木してしまった当時の大銀杏の根から生えていた若芽から新木としてすくすくと育っています。

2012年の神奈川新聞に昨日あった事件のような臨場感あふれる記事がありましたので以下引用

『1219年1月27日実朝の右大臣拝賀の式が催された。実朝は酉の刻(午後六時ころ)に御所を出て鶴岡八幡宮に参拝、夜になると雪が降りだし約60センチ余り積もった。

実朝は式が終わり退出したところを上宮から降りる石階の際で八幡宮別当(長官)の公暁に殺された。28歳だった。

実朝は官位昇進を望み1216年6月に正二位右中将から中納言に進み7月に左中将を兼任と昇進を重ねた。「まだ若いのに昇進が早すぎる」と案じた北条義時は大江広元を通して忠告したが、

実朝は源氏の正統は自分の代で途絶えるのであくまで官職を得て家名を上げたいと言って意見を聞かなかった。』

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運命の1月27日、式に出る前実朝は以下の歌を詠んだと伝えられています(吾妻鏡より)

出でいなば 主なき宿と なりぬとも 軒端の梅よ 春をわするな

無意識のうちに自らの死を予感し、たとえ主人である自分がいなくなっても、梅よ春を忘れないで咲いてほしいという哀切の句です。

鶴岡八幡宮 若宮横にある実朝が植えたビャクシン

実朝は渡宋を夢見て陳和卿と共に船を作りますが、夢かなわず船は朽ち果てました。

しかし、鎌倉には実朝が残した、もう一つの木が今でも存命しています。それは実朝が宋より種を取り寄せて植えたビャクシンで、現在も迫力のある姿で参拝客を迎え入れてくれます。

実朝のビャクシンに漲る生命力は、あたかも彼がつなぐことができなかった命を引き継ぎ、主亡き後の鎌倉を人知れず守っているかのようです。

国宝館の前にある実朝の歌碑

国宝館の前には実朝の歌碑があります。

「山はさけ うみはあせなむ 世なりとも 君にふた心 わがあらめやも」

和田合戦が起こる少し前に詠んだと伝わっていますが、後鳥羽上皇への忠誠心がその内容です。

実朝の生涯は血塗られた権力闘争に休むことなく晒されていました。容赦ない凄惨な世界の中心で生きる時、自分の最期も誰かに殺害されるのであろうと予感しながら生きる苦悩はどれほどだったでしょう。

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和田合戦後の頃に、実朝は罪業を思ふ歌として、「炎のみ 虚空に満てる 阿鼻地獄 ゆくへもなしと いふもはかなし」と詠みました。

鎌倉殿の13人では、和田殿が親しく羽林(うりん)と呼ぶ仲で実朝が鎌倉で心許せる唯一の人として描かれていました。

実朝が22歳のころに和田合戦があり、このころまでに内ゲバで数多くの血が流され和田合戦により一層、わが身の罪と死とその先にあるものを強く感じ、覚悟をしたのではないかと思わせる歌です。

長谷の歌碑

長谷の歌碑は由比ガ浜沿いにあります。

世の中は つねにもがもな 渚こぐ あまのを舟の 綱手かなしも

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『あまが網手を引き海を行くさまを見ているとこの世がいとおしく、世の中の様子はこのまま変わらないでほしいと思う。』といった心情を詠んでいます

物心ついたころより、明日をも知れぬ修羅の世界で生きていた実朝にとって、何もない日常の平穏が眩しく胸に迫ってきたのではとその情景や彼の表情まで浮かんでくるような歌です。

実朝が材木を切り出した船玉神社

実朝が渡宋を計画していた際に造船のため現在の藤沢市船玉神社近辺より材木を切り出していました。

なぜ、実朝の船は進水することができなかったのか、無残に朽ち果てる船を見てどんな思いだったのか・・

船玉神社
住所 神奈川県藤沢市大鋸2丁目4−12
電話 0466-26-0743
拝観料金 無料
拝観時間 拝観自由
祭神・御利益 弟橘姫命
行事 5月15日 例祭(れいさい)
駐車場 なし

実朝聖地巡礼マップ

実朝の鎌倉聖地巡礼マップを作りました

来ぬひとを かならず待つと なけれども あかつきがたに なりやしぬらむ

在りし日の実朝は、誰の訪れを待っていたのだろうか。それとも、答えの出ない何かを求めていたのか。

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平凡な日常を希求しながらも、わが身の運命に待ち受ける最期を予感し、その生を歌に刻んだ希代の歌人が残した足跡を辿ってみてください。

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